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今日一日

「明日の朝、市内で仕事があるから、泊りにいっていい?」
ということで、昨夜遅くに次男が家にやってきた。

薬物使用をやめてから、かれこれ7年半の次男。
回復施設に入所して数年後、次男が初めて家に一泊した日を思い出す。
彼はいやに礼儀正しく、ニコニコ笑顔でやってきた。
ずいぶん変わったものだ、と嬉しくもあり、緊張もした。
地元に戻って、昔の仲間と会ったらどうする?
「ちょっと、コンビニに行ってくる」と夜出かける彼の背中を、不安な気持ちで見送ったりした。
かつての次男の部屋は、きれいに片づけて今は私の部屋に様変わり。
万一、彼が回復半ばで施設を飛び出してきても、ここはあなたの戻る場所ではない、という意志表示をするためでもあった。
そんな私の部屋を、今夜はあなたに貸してあげる。
ふぅ、なんて緊張感のある夜なんだろう。
ほんとは、聞きたいことがいっぱいあったが、よく考えてみたらそれは私の不安や心配を打ち消そうとするためのもの。
今の彼とは、まったく関係のないことだ。
ひとりの人として彼を尊重しないようなふるまいはやめよう。
けれども、慣れ親しんだ私の思考は、
「ほらほら、あのこと聞いてごらんよ」
「もっと優しくかまってあげたら」
と以前の私に引き戻そうとする。
だから、私は当たり障りのない話を、こわばった笑顔でするしかなかった。
次男も、笑顔でそれに応えた。
翌朝、施設に戻る彼を見送ったあとは、へとへとに疲れて、なにもできなかった。

それから時がたち、家に泊まりにくる回数が増えるたびごとに、私たちの関係性は変わっていった。
不安や緊張が薄れていき、次男の過剰な礼儀正しさやニコニコ笑顔も通常運転に切り替わった。
彼もずいぶんと気を遣っていたんだね。
お互いあるがままに過ごせるようになってきたということだ。まだ現在進行形ではあるが。
けれども、一つだけ昔と違うことがある。
私たちには、プログラムがある。
お互いを尊重する、境界線を守る、それが脅かされた時にはちゃんと伝える。
双方がいとも簡単に、ヒョイっと、境界線を越えてしまうから、それはとても大事なことだ。

依存症に完治はないので、今日一日彼は薬を使わない、私は共依存的な行動をしないで生きる。
そんな一日を、明日も明後日も続けていくことができたら幸せだ。
もし、かりにそんな一日が過ごせない日がきても、彼には仲間がいる。私には仲間がいる。
だから、大丈夫!

今朝、「いってらっしゃい」と彼の背中を見送った私の心には不安も迷いもない。
あるのは、ありがとう、の気持ちだけだ。
  
      *NINA*





by familiesofaddicts | 2019-05-28 12:02 | Comments(0)