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タンポポの綿毛が風に乗って種子を運ぶように私たちの思いが​苦しんでいるあなたのもとへとどきますように。


by 関西薬物依存症家族の会

いつも誰かを守ろうとしていた。

私はいつも家族の誰かを守ろうとしていた。

小さな頃は、自称病弱な母を。
結婚してからは、勤めていた会社をやめて独立した夫を。
生まれてきた息子たちを。
そして、薬物依存症という病気に罹患した息子を。

その息子が大麻所持で逮捕された。
そしたらどうだろう、収監された息子をもう守ることはできない。
今度は、残された家族を守ることに必死になった。
世間に知れたら、夫の仕事に影響はでないか? 兄弟の将来に影響はでないか? もうここには住めないのではないか?
そればかり恐れ、なんとしても私が家族を守らなければならない。
一歩外に出たら、いつも以上の笑顔で愛想よくした。
自治会の行事には積極的に参加した。
家にいる時ですら、他の家族がいる時にはなにもないふりをして、いつも以上に元気にすごした。
仕事をひと月休み、せっせと息子の面会に通った。
ひとりになると「なんでわたしばっかり頑張らないといけないの」「なんで誰も私のことを気づかってくれないの」と、自分自身を哀れんだ。

息子が逮捕された!
私の人生は、いったい何なんだろう。いったい、私がなにをしたと言うんだ。こんな罰を与えられるほど、私は悪い人間なんだろうか。
そう悲嘆にくれながらも、逮捕されたことに、どこかホッとしていた。
もう私が監視することもない。薬物のないところに息子はいるのだから。
だから、高知氏が逮捕されたときに「ありがとうございます」と言った気持ちが、私にはわかる。
これで、きっと息子の薬物の問題は解決するはず。
出てきたら、薬物から縁が切れる。
そう信じて疑わなかった。
いや、そう信じたかった。

けれども、現実は全く違った。
薬物依存症という病気を甘く見ていたのだ。
治療にも、支援にも繋げることができなかった、いや、それが彼に必要だとその頃は思ってもみなかった私だから、それは当然のこと。
家族の自助グループに通い始めたばかりの私は、仲間たちの経験を聞きながら「私の息子は違う。きっと出てきたら薬物をやめるはず」どこかでそう思っていた。
薬物依存症について知るには、まだ時間がたりなかったのだ。

そして何年もの間、私は息子を間違った方法で守り続けたのだ。
守っている、と思いながら私がやり続けたことが、息子の薬物依存をさらに進行させているとも知らずに。
ずいぶん遠回りをしたものだ。

だからこそ、かつての私のように今苦しんでいる家族の中で同じことが繰り返されないように、声を上げていこう。

 *NINA*


by familiesofaddicts | 2019-07-09 11:30 | Comments(0)