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タンポポの綿毛が風に乗って種子を運ぶように私たちの思いが​苦しんでいるあなたのもとへとどきますように。


by 関西薬物依存症家族の会

お願いいたします。

世間のみなさまに、依存症の話をするのはとても難しい。
ましてや医療従事者でもなく、専門家でもない当事者家族である私たち家族が。

我が子可愛さのあまり擁護していると見えないか、あたかも自分が被害者であるかのように見えないか。親のせいだろ!と言われないか。
いろいろなことを考え、恐れ、逡巡してしまいます。

そもそも最初に違法な薬物に手を出したのがダメ。
依存症になる可能性があることをわかっていて薬を使ったのだから、制裁を受けるのは当然。
普通の人は違法な薬物になんか手を出さない。
苦しくても、孤独でも頑張って生きている人はいっぱいいる、それで薬物を使うのはおかしい。
自ら手を出しておいて、病気だから治療すればいいなんて都合がよすぎる。
暴力団の資金源になっているのに、薬物事犯に甘すぎる。
何度チャンスを与えても、裏切り続ける。

このような意見を目にして、どう私たち家族の思いを伝えたらいいかわからず、動けなくなってしまうのです。
私の家族の一人が薬物依存症になるまでは、私も多くの人と同じように非難する側でした。
なんで違法だとわかってて薬に手を出すんだ!
やめると反省してたのに、なんで繰り返すの?
いったい親は何をしていたんだ!
と、違法薬物を使用する人を恐れ、蔑んでいたといっても過言ではありません。
そしてそれは巨大なブーメランとなって、自分の手元に返ってきました。

私たち家族は、なんとか家族の愛の力で薬物をやめさせようと長年頑張ってきました。
怖くて、恥ずかしくて、誰にも相談できずに、家族だけでなんとか薬をやめさせようとしました。
相談できずにいた間に、どんどん薬物依存の症状は悪化していき、いよいよ家族ではどうすることもできなくなり、やっとのこと治療・支援にたどり着きました。
そして薬物依存症は病気なので治療が必要、家族の力ではどうすることもできないとわかったのです。
私たちのやってきたことはなんだったのだ?どうしてもっと早くに助けを求めたり、相談しなかったんだろう?と後悔もしましたが、世間の批判が恐ろしく、職や住居を追われるのではないか、相談したら警察に通報されるのではないか、という恐れがありました。
病気だという認識もなく、治療し、プログラムを受けて回復可能だということも知りませんでした。
知識、情報がないことで間違った方法で依存症と闘い続けてしまいました。
だからこそ、その知識や情報を速やかに今苦しんでいる当事者やその家族に届けたいと思っています。
病気だからと罪を逃れようとしているのではなく、罰しないでほしいとお願いしているのではありません。
治療に繋げ、回復、社会復帰のチャンスを与えてくださるようお願いするまでです。

やり直すこと、社会復帰を拒まれたままでは、違法薬物を使用し罰を受けた本人はその後生きていくことができません。
親や家族が経済的に面倒をみることにも限りがあります。
親が年老いてこの世を去ったあと、彼らは生活保護で生きていくことしかできなくなります。
そうなってしまったら、自分勝手に違法薬物に手を出し、税金で生き延びるとは許せない、という批判もでてくることでしょう。

都合のいいことを言うな、というご批判もあることは承知しています。
けれども、彼らが自立して生活できるようになるためには、仕事をし税金を納めいち社会人として生きていけるようになるためには、治療・回復が必要であることご理解いただき、社会復帰のチャンスを与えてくださるよう心からお願いいたします。
社会復帰し、自立してこそ、迷惑をかけた方々に当事者自らが、本当の意味での責任をとることができると考えます。

著名人の逮捕が続き、上記のような私的制裁の声を耳にすると、今現在苦しんでいる当事者、そしてその家族は怖くて、ますます助けを求めたり、相談することができなくなり、その間に逮捕され治療・回復に繋がるチャンスを逃す恐れがあります。そうすることで、ますます薬を止めることが難しくなります。
バッシング報道、過剰な私的制裁で追い詰められている当事者、その家族がいます。
違法な薬物を使用してしまった人ではありますが、私たちの愛する家族の一人です。
彼らの回復を願って、みなさまにお願いいたします。
      
   *NINA*



by familiesofaddicts | 2019-11-19 13:38 | Comments(0)