マッチ売りのオカン
2019年 12月 24日
今日は、クリスマスイブ。
と言っても、特別な予定はありません。
ちいさなケーキを夫と二人で食べましょうか。
この時期になると思い出す景色があります。
薬物の問題のあった息子と暮らしていた頃のことです。
今はオフィスのすぐそばに住んでいますが、以前は在来線から地下鉄に乗り換えて1時間ほどのところに住んでいました。
心が疲れて、周りのすべてをシャットアウトしながらの毎日。
これじゃいけない、そう思って地下鉄に乗る距離を歩いてみました。所要時間30分。
その30分がちいさな冒険のようでした。
オフィス街の思いがけないところに、立派な教会があったり、すばらしいお庭の古いお家があったり、おしゃれなカフェがあったり。
私がこうして苦しんでいても、みんなは変わらず生きているんだなあ、と僻むでもなく、日常生活が鮮やかによみがえってきました。
それから、このちいさな冒険は私の日課になりました。
妻とか、母とかじゃない、私でいられる時間。
冬のこの季節の景色はとても美しかった。
オレンジ色の灯りの下で語らう美しい男女。漏れ聴こえてくるJAZZの調べ、グラスを傾ける洒落な人々。
立ち飲み屋のカウンターでネクタイを緩めて、熱心になにやら議論しているサラリーマン。
美しい木目の引き戸を出入りする人の隙間から垣間見える、板前さんのきりりとした立ち姿。
ふと、昔読んだマッチ売りの少女の絵本を思い出しました。
寒い雪の降る夜、マッチを売りながら少女が家々の団欒のようすを窓越しに羨ましそうに見つめている絵が頭に浮かんきたのです。
ふふっ、さしずめ私は、マッチ売りのオカンやなあ、と自嘲気味に笑ってしましました。
けれども、不思議と悲しいとか、寂しいとか、辛いとか、そんなネガティブな気持ちにはならなかったのでした。
みんな楽しそうでよかった。幸せな時間を大切にね。
そんな気持ちで毎日それらの美しい景色を楽しみました。
人々の日々の営みが、もしかしたら、私にチカラを与えてくれていたのかもしれませんね。
今でも、このちいさな冒険は続いています。
通勤ではなく、自助グループに通う道程で。
歩きではなく、自転車に変わりましたが。
相変わらず、この季節の街の風景は美しい。
語らう人々、オレンジ色の灯りは、私の心にちいさな幸せを運んでくれます。
May your Christmas wishes come true🎄
*NINA*
by familiesofaddicts
| 2019-12-24 12:04
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